小学校低学年のこどもに教える掛け算

家庭で楽しく勉強する

掛け算:発見いっぱいの知的アスレチック

 海外に住んだりすると、子どもの勉強を親が直接教えなければならない場面が一気に増えます。
しかし実際には、親が算数の根本をよく知らないまま「これくらい簡単でしょ?」と単純な計算を繰り返させたり、計算ドリルを大量に与えて自分は台所で夕食の支度……。
これでは子どもは「算数ってつまらない」と感じてしまいます。

 小学校で「掛け算」を学びはじめると、子どもたちの算数の世界は一気に広がるわけですが、親自身が掛け算の“本質”を知らなければ、本当の意味で子どもの学力を伸ばすことはできません
このブログでは、「親が“教える力”をつける」ことをゴールに、家庭でできる掛け算の指導法・世界の計算術・子どもが算数を好きになる工夫まで伝授します。

まずはこれをマスターしよう!

 掛け算を教えるにはまず足し算と引き算をマスターしなければなりません。

前提知識

そもそも掛け算って何?

掛け算(multiplication)は、
「同じ数を何回も足すこと」を一気にまとめる“省略記号”です。

たとえば「3×4」は「3+3+3+3」(3を4回足す)と同じ意味。
まずは「掛け算はたし算の便利な略し方」と親子で納得しましょう。

九九だけが掛け算じゃない!

暗記に隠れた落とし穴と、親の役割:
九九を暗記するのは日本の伝統。でも、
「九九さえ覚えれば掛け算はOK」と思い込む親が多いのも事実です。
九九は大事な基礎ですが、それだけでは“応用力”は育ちません。

親のNG例
  意味を説明せず「覚えろ!」とだけ言う
 ✖ こどもに九九表を読ませて自分のしごとをしに行きこどもを放置する
 ✖ 計算ミスを責めるだけで理由を聞かない

親ができること
 「3×5ってどういう意味?」と問いかける
 ◎「もし3つの箱に5個ずつりんごが入っていたら?」と具体例で話す
 ◎一緒に声に出して覚える

掛け算という“知的アドベンチャー”の始まり

子どもが初めて「掛け算」と出会う瞬間――それは、ただ新しい計算を学ぶだけではありません。
それは、「数」という世界が、一気に広がる扉を開く瞬間でもあります。

「たし算」は、同じものを何度も何度も足していく作業です。
でも、毎回「3+3+3+3+3……」と繰り返していたら大変ですよね。
ここで登場するのが「掛け算」という発明。
掛け算は、「同じ数を何回も足すこと」を、一気にまとめる魔法の道具です。

たとえば、
「3×5」は「3を5回足す」という意味
「3+3+3+3+3」と同じことなんだ、とまず親子で納得しましょう。

九九を覚える前に大切なこと

日本の小学校では、九九を丸暗記するのが定番です。
もちろん暗記も大事ですが、
「意味を知らずに覚えろ!」と言われても、子どもの頭にはなかなか入ってきません。

大切なのは、
なぜ掛け算が必要なのか?
掛け算はどんなときに使うのか?
その「本質」を、親自身が知って、子どもに伝えることです。

 日本の教育って、計算の方法は教えるけど、
 その計算で何ができるのかは教えませんね。
 もしも微分や積分がこれほど実生活にリンクしたものであると高校の時に教えてもらっていたら、筆者ももっと身を入れて勉強したと思います(笑)

そもそも、なぜ「九九」があるの?

 九九は「掛け算をマスターするための道具」だということを教えてあげてください。

 たとえば、足し算を覚えるときに「10の補数」や「さくらんぼ計算」のように、計算を楽にするコツや決まりがありましたよね。九九は、その「掛け算バージョン」と言えます。

 本当なら「3の7倍は?」と聞かれたら、毎回「3+3+3+3+3+3+3」と7回も足し算をしなきゃいけません。でも、よく使う掛け算の答えをあらかじめ九九で覚えておくと、「3×7は21!」と一瞬で答えがわかるという便利なことを教えてあげてください。

 九九は、足し算のときにやった「10の補数」や「さくらんぼ計算」と同じように、「掛け算の計算をラクに、そして速くできるようにするための秘密道具」だということを説明しましょう。毎日ちょっとずつ練習して九九が身につけば、掛け算の世界が一気に広がることも教えてあげてください。

九九を教える

Youtube動画

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 九九の歌なるものがYoutubeで公開されています。
 ここをクリックして動画を見てみましょう
 こどもと一緒に聞いてみるのも良いかもしれませんね

お風呂ポスター

お風呂に張るポスター形式の九九の表です。
トイレに張るバージョンもあります。
Amazonなどで売っています。

声に出すのがいちばんの近道

 九九を身につけるときだけでなく、何かを学ぶときに共通して言えることですが、「声に出して読む」ことが学習にはいちばん効率的です。
 たとえば、銀行のオンライン決済などで6桁のワンタイムパスワードがスマホ画面に一瞬だけ表示されるとき、小さな声で数字を読み上げて入力すると、不思議と覚えていられますよね。声に出して読むことで、SMSを開きなおしてコードを見返さなくても済むことが多いわけです。でも、オンライン決済などのコードは大声で読んではダメですよ(笑)

九九も同じです。目で読むだけや紙に書くだけではなかなか覚えられなくても、毎日声に出して繰り返すことで、自然と口と耳で記憶に残るようになります。

「ひたすら書く」という勉強法は、本人が「これを覚えたい」「書けば覚えられる」と自分で納得しているときはとても効果がありますが、理由もわからずやらされていると、ただの苦行になってしまいがちです。

たとえば、「ににんがし(2×2=4)、にさんがろく(2×3=6)」とリズムに乗せて何度も声に出してみましょう。
声に出すことで、体全体が九九のリズムを覚えてしまうのです。

家族みんなで声に出し合ったり親が“お客さん”役になって子どもに九九を披露してもらうのも効果的です。

書いて覚えさせるのは「本人が納得したとき」だけ

 よく「九九を何十回も書きなさい!」と言われがちですが、
実はこの方法、本当に九九を覚える意味や必要性を自分で納得したときだけ、大きな効果を発揮します。

 つまり、小学校中学年以下のこどもに教育には非常に不向きです。

 本人が「ここを覚えたい」「書けば頭に入る」と感じているなら、書くことは記憶の強い味方になります。でも、意味もわからず「ただ書け」と言われてしまうと、九九が「つらい修行」や「つまらない作業」まさに「苦行」になってしまうことも多いのです。

九九の面白いトリビア

 掛け算九九には、おおしろい秘密が詰まっています。もしも子供がこのような秘密に気づいたら、大いに褒めてあげてください。子供の気づきを可視化するようなスタンプ帳などを用意しておいたり、壁に〇を書いたりすることで子供の承認欲求を満たしてあげることで、勉強への熱意が上昇することがあります。
 では、九九の面白いトリビアをいくつか紹介しましょう。

9の段の答えは数字を足すと必ず「9」になる

たとえば――
9×2=18 → 1+8=9
9×3=27 → 2+7=9
9×4=36 → 3+6=9
…という具合に、9の段の答えの十の位と一の位を足すと、必ず「9」になります。
子どもに「ホントだ!」と声に出して確かめさせると大ウケします。

平方数を境に上下が対称になっている

 平方数とは、2x2や3x3のように同じ数を掛けたもののことです。
 この平方数を境に上(水色の部分)と下(黄色の部分)が同じ答えになっています。

 つまり、掛け算は足し算といっしょで掛ける順番は関係ないということです!

 掛け算は、1x2x3と3x2x1は同じ答えになります。

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3の段と5の段=8の段

 掛け算九九の表を作ってみると、さらにおもしろい法則が見つかります。

 3の段の答え+の段の答え=8の段の答え

 たとえば(3x2)の答えは「6」で、5の段の(5x2)の答えは「10」ですが、この6と10を足すと、8の段の(8x2)の答えと同じになります。

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線を引いて答えが出る魔法

 インドが発明した線を引くだけで掛け算ができてしまう方法です。

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たとえば「3x2」を計算する場合、縦と横にそれぞれ3本と2本の線を引いて、これらの線の交点の数を数えればそれが答えになっています。

複数の桁の掛け算も可能

 実はこのインド式の線での計算は3桁の掛け算や4桁の掛け算でもできます(笑)
 12=縦の線1本と2本。22=横の線2本づつ引く。

線を引いて計算する方法は、このようなインド由来のものから、桁数が増えたときに分かりやすいヨーロッパ由来のものがあります。

掛け算の学びかたも基本はおなじ

徐々に教える

 掛け算も足し算の時と同じで、まずは少ない1桁どうしの掛け算からはじめます。3x2(3つのグループを2つ作る)などは、おはじきを使って直感的に教えることができると思いますが、7x8(7つのおなじきのかたまりを8こ作る)などになってくると、おはじきを数えるだけでも大変です。そこで九九の登場です。

九九は気長に構えて覚えるまでやる

 九九は強制的に詰め込んでもいけないので、楽しくこどもが無理なく覚えるまで続けてください。以下のようなツールを使ってください。

  • おはじき
  • 掛け算九九のポスター
  • 九九のうた
  • 親子クイズ
  • 数値線を使った計算
  • 九九バトル(後述)

複数桁の掛け算は筆算を使う

 高学年以上になると習う2桁以上の掛け算では、必ず筆算をしてみることを教えましょう。
この時、覚えた九九が非常に役にたつことを子供が実感できるように教えてください。

大人向けのトリビア:

マイナスどうしを掛けるとプラスになるのはなぜ?

 YouTubeなどで盛んに説明されている「マイナスにマイナスを掛けるとどうしてプラスになるの?」。この問題、動画で解説されていることをよく聞いていると、すべてある1つの答えにたどり着くことがわかります。

 マイナスxマイナス=プラス、これは「数学の世界を一貫して矛盾なく保つための大原則」

 つまり、それは「数学のルール」というだけで、本当は理屈や計算で出せるものではありません。虚数や多項式を用いて説明している人もいますが、そんなものは必要ないんです。
 無理やりに計算でこじつけようとすると余計にわからなくなる良い例ですね。

 これってこどもに聞かれたときに答えにくいですよね。「そうなんだからそう覚えなさい!」なんて言ってしまっては身も蓋もないですから・・・。しかしこればっかりは「大前提(決まり事)」なので素直にそう言うしかないですね。

こどもの将来がわかる

 なぜマイナスとマイナスがプラスでなければならないのかを突き詰めようとする姿勢で、その子供が将来のどんな職業に向いているか占うこともできます。

・「なぜなんでマイナスxマイナスでプラスになるの??」ルールや「決まり」に疑問を持つ子はゴーイングマイウエイな探求者タイプ。「分析」「研究」「教育」「法律」「企画」など論理の根本や本質を問う仕事に向いています。
・「マイナスxマイナスでプラスになるのか…OK!わかった!」逆に「ルールはルール」ということをすんなりと納得できる子は、協調性MAXな性格。実務・技術・エンジニア・コンピュータのプログラマなどの実装や運用系に向いています。

なにしろコンピュータのプログラムで非常によくつかわれる以下のような式…
   A=A+1
この式を見て脳が沸騰してしまう人はコンピュータプログラマには向いていません(笑)

では、そういう細かいことに一切興味を示さないこどもはどうでしょうか?
そういうこどもは、「どうして?」より「今日もやるぞ!」と気持ちを切り替えて続けられる仕事に向いています💦 どんな子供でも無限の可能性があるというわけですね・・・。

掛け算九九カードバトル

家庭で楽しめる掛け算九九をモチーフにしたカードゲームです。トランプを使います。こどもといっしょに楽しみながら九九を覚えるヒントです。

ルール

カードの数値の扱い
 A(エース)は「1」、絵札(J・Q・K)はすべて「10」として扱います。
 ジョーカーは「好きな数字」にできます。

カードの配布
 すべてのカードをプレイヤー全員に均等に配ります。

カードを出す
 順番に1枚ずつ、手札からカードを場に出していきます。

掛け算の回答
 場に2枚カードが出たら、それらの掛け算の答えになる数字を表せるカードを持っていれば、すばやく場に出してください。

 例:
 - 場に「9」と「9」が出ていたら 答えは81なので
  ➔ 8とAのカード
  ➔ もしくは 絵札8枚とA、
  ➔ またはジョーカー1枚
 - 場に「3」と「8」が出ていれば 答えは 24なので
  ➔ 2と4のカード
  ➔ または絵札2枚と4のカード
  ➔ またはジョーカー1枚

勝敗の判定
 一番早く正解カードを出した人がそのラウンドの勝者です。

ペナルティ
 負けた人(間違ったカードを出した人、出し遅れた人)は場のカードをすべて引き取ります

ゲームの勝敗
 5回戦行い、勝利数が多いプレイヤーが勝者です。

    🔁 アレンジ・補足ルール

    • ジョーカーの活用
       ジョーカーは任意の数字として使えますが、1ゲーム中1回だけ使用可能にするとバランスが取れます。
    • 初心者向けルール
       掛け算の範囲を「1〜5の段だけ」に制限してもOK。

    シリーズ一覧

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